2018 Chestnut League SPORTS ACADEMY
関西学生アメリカンフットボール連盟 リーグドクター垣内 英樹 先生の特別講演
少年指導で事故を防ぐ安全な指導
開催日 | 2018年8月27日(月) |
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開催場所 | 関西学院大学 大阪梅田キャンパス |
参加人数 | 約50名 |
今年で9回目を迎えた今回のチェスナットリーグ・スポーツアカデミーは『少年指導で事故を防ぐ安全な指導』というテーマについて、第1回目のスポーツアカデミーでもご講演頂きました関西学生アメリカンフットボール連盟で安全なアメリカンフットボールの啓発に専念されておられる垣内 英樹先生にお話しを頂きました。今回はチェスナットリーグ関係者 コーチ 約50名が参加致しました。ご講演頂きました内容をご紹介させて頂きたいと思います。
「少年指導で事故を防ぐ安全な指導」
◆日本のアメリカンフットボールは安全なのか?
近年、高校・大学のリーグにおいて死亡事故が発生しており、その9割が急性硬膜下出血で1割が熱中症である。米国内においても同様に死亡事故は発生しており、人気に陰りが見え始めた事もあった。
現在 米国内での競技人口は約200万人。日本国内では1万5千人程度である。日本国内においても2001年~2007年には2.9人が亡くなっており、数年に1人の割合で事故が起きている事になる。米国でも年間約6~13人/年の選手が亡くなっており、数字だけを見ると決して少なくない。 しかし、日本とは圧倒的に競技人口が違うが、日本と米国における死亡率を比較したところ以下のような統計結果となった。
仮に日本の年間死亡率を米国の競技人口で考えた場合 年間30~58人が亡くなる! 反対に、米国の年間死亡率を日本の競技人口で考えた場合 日本では10~22年に一人が亡くなる計算になりました。日本のアメリカンフットボールは決して安全ではないといえる。
日米の死亡率 比較
- 日本の年間死亡率
1.5~2.9 人/年 - 米国の年間死亡率
0.3~0.68 人/年
◆指導時における安全管理
○脳震盪対策
脳震盪とは意識消失、精神活動・認知機能の障害、頭痛、めまい、耳なり、複視、睡眠障害などの症状がみられる。また子供達は首が細いので、より強く脳が揺さぶられる事がある。脳震盪の持続時間は通常は短時間で消失するが、小児や若年者は長く続く事があるので特に注意が必要である。
もし、子供達にふらついた症状がある場合は脳震盪の疑いがある。すぐにプレーを止めさせる事が重要で、吐くなどの症状は危険なサインであり、すぐに救急車を呼ぶこと。
脳震盪の疑いがある場合
- その日は絶対にプレーさせない。
- 受傷後、3週間以上は運動させない。
- 復帰には医師の診断を仰ぐ。
○熱中症対策
子供は熱を放出する汗腺が未発達の為、顔が紅潮することがある。これは熱が放出できていない証拠であり、すぐに防具を外したり、休憩をさせる必要がある。
○心臓振盪対策
幼少期に胸部を強打した際に起こる現象でAEDが必要となる。大人とは使用方法が若干異なる為、正しい知識が必要となる。
◆米国における安全管理
米国においても脳震盪の問題はアメリカンフットボールに限らず全てのスポーツにおいて重要な課題となっている。
2008年に「Zackery Lystedt Law」(ザッカリーライステッド法)が制定。
これは脳震盪について制定された法律で3つの軸で成り立っている。
下記のように国を挙げて、脳震盪に対する安全教育を進めている。
- 選手、コーチ、保護者は脳震盪について正しい教育を受け、公的な機関より受講した証明の発行を受ける必要がある。
- 脳震盪、頭部外傷の疑いがあった選手は即座に試合、練習から離れなければならない。
- 脳震盪の受傷後、練習に復帰するには脳震盪の管理、評価に精通した医師の書面による許可が必要である。
◆少年・少女スポーツの指導者に求められる事
少年・少女スポーツに携わるコーチは子供達の永い未来へ影を落とさないように心がけることが大切である。 スポーツの価値や素晴らしさを子供達に伝え、何よりも未来ある子供達の安全を最優先に考えなければいけない。 また、勝利は目標ではあるが『目的』ではない事をコーチ自身が理解し、それ以上に大切な事を学ぶきっかけとなるべきである。米国では子供達3つ“R” を教えている。
- Respect our opponent
(機会に感謝する) - Respect our organizaiton
(組織・チームに感謝する) - Respect our teammate
(チームメンバー・仲間に感謝する)

講師 垣内 英樹氏のPROFILE
垣内 英樹
関西学生アメリカンフットボール連盟 ゲームドクター/日本アメリカンフットボール協会 医事委員
プロフィール
1958年生まれ 和歌山県出身
高校~大学(医科大6年制)を通じ選手として9年間アメリカンフットボールを経験され、大学卒業後は母校:兵庫医科大学のコーチとして20年間指導者も経験されています。またそれ以降は関西学生アメリカンフットボール連盟の医療安全面の仕事に従事され年間100試合程度にチームドクターとして帯同されました。
第6、7回 EPSON IVY BOWL 学生オールスターチーム チームドクター/第3回 WORLD CUP アジア・オセアニア予選 日本代表チーム チームドクター等のトップカテゴリーでの仕事も経験されています。同時に日本アメリカンフットボール協会の医事委員として所属され、アンチドービング部会員も経験。主な活動は関西学生アメリカンフットボール連盟で安全なアメリカンフットボールの啓発に専念し、医療面での環境整備に腐心されている毎日です。
最後に講演を快くお引き受けして頂きました垣内 英樹先生や会場のご協力を頂きました関西学院大学の皆様にはこの場を借りて、御礼申し上げます。